半径2キロ程の空間に約60の窯元が軒を並べる今田町。その中でも有数の歴史を持つ「稲右衛門窯」。江戸時代中期1734年創業で、300年を経過した今でも古の技術が息づいている。


現在、作陶をしているのは10代目を襲名した上中稲右衛門さんと、その息子の剛司さん。お二人とも小さい頃から父の背中をみて、丹波焼の真髄を学びながら育った。
伝統を重んじ、昔ながらの丹波焼を作陶する父と、新しい風を呼び起こそうとする息子。二人は共に丹波の窯や技法を駆使し、丹波焼を継承しようとする姿勢を貫いている。


平安後期から続く丹波焼には様々な焼き方があり、その中で最も古く手間がかかるのが穴窯を用いた方法である。利便性が優先される現代では敬遠されがちだが、稲右衛門さんはその穴窯で焼く陶器が1番好きだと目を輝かせる。
「確かに手間はかかりますが、それでも技術が存続しているのは、その方法でしか生み出せない美しさがあるからです。山の白土を使い、穴窯で還元焼成すれば、器に降りかかった灰が化学変化を起こし、とても美しい緑色を器に残します。丹波焼が始まって800年の月日を経ても、その緑を美しいと思う人々の心は失われていません」と語る。
焼き上げた器を窯から出せば、かけた苦労を忘れるような美しさがそこにある。

物見遊山で日本各地や世界に足を運ぶ剛司さんは、丹波焼に対する考え方も柔軟である。
「丹波焼は日本六古窯にも数えられる窯の一つですが、関西を離れると知名度はまだまだです。“黒豆しか知らなかった”という方に、少しでも丹波焼のことを知ってもらえればと思って作陶しています。」
剛司さんが最近手がけているのは「鎬(しのぎ)」や「墨流し」といった丹波焼の伝統技法を取り入れつつも、鮮やかで深みのある赤や青色をしているユニークな作品。
伝統だけでも目新しさだけでもない、ハイブリッドな丹波焼を開発して、外への発信を盛んに行っている。


煉瓦を積んで作成した現代風の穴窯を用い、その焼き上げによって薪の灰が器にかかり、独特の色合いを残す自然釉(しぜんゆう)の美しさに魅せられた稲右衛門さん。数々の名作を世に送り出すことにも力を注ぐ。好きな色合いを出すためには、奥山まで赴いて白土を採取することもあるそうだ。工房では陶芸教室も開催していて、立杭における昔からの製法を後の世に伝えるべく、惜しみなくその技術を披露している。


■稲右衛門窯(いなえもんがま)
住所:兵庫県篠山市今田町下立杭183
電話:079-597-3105
営業時間:
定休日:不定休
駐車場:有り(工房1台、店舗5台)
ホームページ:http://www.inaemongama.com/






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